2019.6.27更新終了しました。
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詳細

像の正体

実家の座敷には、こわい像がありました。

像と呼べるほど大きなものは1、2体ですが、こわい置物やなにに使うのかわからない道具がいくつもあり、理由がなければ立ち入りたくない場所が座敷でした。

 

父方の祖父母と同じ家に住んでいましたが、ざっくりとした二世帯住宅のような作りで、祖父母の暮らすエリアにも座敷があります。

そちらにも同じくこわい像があり、棚には不気味な置物が。

どこの家にもあるらしいそれらは薄気味悪く思えて、なるべく見ないようにしていました。

 

ところが、こわいからこそ知りたくなるもので、ひとりで留守番を命じられたときには座敷を探索しました。

普段は目を合わせないようにしている像の前に立ち、まじまじと見つめます。

触れてもよいのだろうか。

呪われたりしない?

 

実家は、とても静かな場所にありました。

家には誰もいません。

耳がキーンとなるほどに静かで、目の前にはこわい像、なにもできない子供がひとり。

 

そこまでじっくり見つめ合ってしまえば、不思議とこわさは感じません。

ただ、どうしたらよいのかわからない。

気まずいのと飽きもあって、そっと立ち去るのがいつものパターンでした。

 

大人になってから、父とふたりだけで実家に行く機会がありました。

すでに実家はカラで、もう誰も住んでいません。

 

「お前の方が、この家のことをよく知っているだろう」

人生のほとんどを単身赴任先で過ごしてきた父は、ぼそりと言いました。

 

たしかにそうだと思う。

でも、知らないことも多い。

 

父を引っ張って座敷に行き、思い切って聞きました。

この像はなに?どこから来たの?

子供のころは大人に余計なことを言ってはいけないと思っていたので、聞けずにいたことでした。

 

「おじいちゃんが訪問販売で買った」

 

想定外の答えに驚いていると、父は楽しそうに続けます。

「こっちは〇〇おばさんが旅行に行ったときに作った置物」

「これはお父さんがおばあちゃんに買ったけど、いらないと言われたからここに置いた」

 

祖父は衝動買いの達人で、そのおかげで楽しい思いもしましたが、本当にとんでもないものを買うので母はいつも怒っていました。

関連:四角を編む

 

たしかにそうだった。

特に訪問販売には弱くて、布団、浄水器、パソコン、なにかの権利(騙されている)。

像の一体や二体、いいように言われれば祖父は買います。

他の置物やら道具やらも、なんてことない理由でそこに置かれたものばかりでした。

 

正体がわかってしまえば、どことなく複雑な表情に見える像。

子供のときは立ったまま見た像を、しゃがみ込んで見つめました。

なんだ、そんなことだったんだ。

 

「お父さん、私、子供のころにこれがこわくて…」

父が知らない時間の話をする私の声を、像もひっそりと聞いていたのかもしれません。

 

コメント

  1. D より:

    ちょっと古い方のおうちには、曰くありげなブキミを放つモノは必ずありますね。
    由来を聞くとなんてことないものから、え? なものも含まれており・・・
    ワタシは出どこ不明のちょっと大きなこけしを、勝手に受け継ぎましたw なかなかなオブジェです☆彡

  2. 風のジハード より:

    小学校の時、友達の家の座敷にレプリカの武者鎧があったのが怖かったな。
    「かくれんぼ」しても、その部屋だけは避けてた。
    江戸川乱歩のシリーズでは、その中に隠れてるだよね。「怪人二十面相」が・・・

    俺の実家には土蔵があって、その中は真っ暗。理由は忘れたけど 小学生だった俺は 何か悪さして、お袋がとても怒ったことがあった。
    お仕置きで その土蔵に閉じ込められそうになったんだけど、とにかく号泣して嫌がったのを覚えてる。
    いるんだよね。「こなきじじい」や「ぬりかべ」が・・・

    俺にはすぐ わかったよ・・・?
    あさがおさんの祖父が訪問販売で買ったと言うのは、お父さんの優しい嘘だよ。
    気づかなかったかな・・・?
    その座敷にあった こわい像の中に埋められていたものが・・・

    子供の死体・・・

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