2019.6.27更新終了しました。
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夏のある日

子供のころは、夏でもエアコンを入れずに過ごした日が多かったように思います。

実家は構造のせいか、部屋によって体感温度がまるで違いました。

母は手芸の道具を、私は学校の宿題や習い事の道具を持って、風通しがよく涼しい部屋に移動して過ごしたものです。

 

母と私はとても仲良く暮らしていましたが、友達同士のように親しく言葉を交わしたりはしません。

時にはそんな日もありましたが、日常的にはひっそりと、同じ部屋でそれぞれの時間を過ごしました。

 

家の中で一番涼しいのはキッチンです。

窓を開け放ってツルッとした床に座り込むと、風がある日中は文句なしに快適。

静かな夏休みの午後、母は冷蔵庫のまえ、私は調理台のまえに座って過ごすのがお決まりでした。

お行儀は良くないのですが。

 

15時くらいになると、母が動き出します。

まずはやかんでお湯を沸かして、コーヒーの用意。(夏でもホット)

次に冷蔵庫や戸棚を開けて、今日のおやつを選定。

「食べる?」と必ず聞かれるのですが、私はこの時間におやつを食べると夜ごはんが入らなくなるので、「いらない」と。

 

母はつまらなそうにおやつを食べながら、「痩せている人は違うよね」と絡みます。

キッチンの片隅に寝かされたダイエット器具がやたらと目に付き、また母も私がそれを見ていることに気付き、ふたりして顔を見合わせて笑うのでした。

 

当然日が落ちてからの方が涼しくなりますが、網戸にしたまま明かりをつけると小さな虫が入ってくるので、仕方なしに窓を閉めてエアコンや扇風機のスイッチを入れます。

お風呂の用意や簡素な夜ごはんの支度で母と動き回っていると、妙に明るくにぎやかな空間に感じられて、昼間の薄暗く静かなキッチンとは別世界のようでした。

 

お風呂もごはんも済ませたらキッチンの明かりを消して、今度は座敷へ移動します。

子供のころは母が毎年手縫いの浴衣を作ってくれていたので、寝る時間が来るまで器用な手元を眺めて過ごしました。

 

夏休みが明けるとクラスメイトは旅行やイベントの思い出を作文にしていましたが、私は、何気ない一日について書きました。

私にとっては外へ出かけるよりも濃い時間でしたが、母に見せると、「どこへも連れて行ってあげなかったみたいじゃない」と困り顔。

今も昔も、特別なお出かけよりも当たり前に流れていく日常の時間が好きなんですよね。

 

コメント

  1. だいすけ より:

    例えば 風邪などをこじらせた時 普段の健康がいかにありがたく 且つ当たり前ではない
    といったように 普段の何気ない日常というのは 特段どこか出かけたとか イベントが
    あったといったことと同じように 大切なのかもしれませんね

    自分は一人暮らしで 今年のアタマ蜂巣炎という ちょっとやっかいな病気を患い
    市内の総合病院に入院しました そこの病院の看護はとても手厚く 食事もびっくり
    するくらいおいしかったのですが そんな中でもやはり ここの汚らしい2DKでの
    自分のためだけに作る簡素な食事に 一日でもはやく戻りたくて仕方ありませんでした

    介護の仕事をしていたこともあったのですが どんなに頑張ってお世話をさせて
    頂いてるつもりでも やっぱり誰が待つわけでもない自宅に帰りたい
    最後を看取るまでそうおっしゃっていた利用者の方も多かったように思います

    • さとぴょん より:

      こんにちは\(^o^)/

      今日のは、いいですね。まるでその場に居るように情景が鮮明に浮かんできます。

      うちの家は、父親主導型だったので何処かへ行くとなると父のレジャーのお伴が多かった。ごく稀に、遊園地、プール位はあったかな。

      いつぞやの記事にもあったように、毎日が平穏に過ごせるって本当に幸せなことです。当たり前な日があるからこそ、特別な日は格別嬉しさも倍増すると思う。

      子供の頃は母の手縫いの浴衣…今のあさがおさんの浴衣姿想像しました。夕暮れ時、そよ風が風鈴を鳴らす縁側で団扇を扇ぎ夕涼みするあさがおさん。白いうなじが色っぽくて綺麗。石鹸薫る膝枕で耳ホジホジして貰うのも良いかな。(#^.^#)

  2. 雲水 より:

    ゆっくり流れる時間とか
    その場の匂いとか
    風景が感じ取れるこのブログは
    本当に好きだな。。。

    本当に好き。

  3. Gin より:

    よいね、とても

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